2008/01/25

NHK

 そろそろ次号の最終校了の時間ですが、
NHK新会長の挨拶を原稿に入れなければなりません。
写真と原稿が届くのを冷や冷やしながら待っているところです。

 それにしてもNHKのインサイダー取引疑惑には驚きました。
記者の罪意識の低さにも驚きましたが、
同業者としては、
放送前の特ダネに5000人もの職員がアクセスできるというところに一番驚きました。

 そもそもインサイダー取引が日本で法律違反になったのはそう昔ではなく、
1989年のことです。

 ちょうどそのころ、社会部の新宿署担当から警視庁記者クラブの捜査2課担当(汚職、詐欺、横領、選挙違反など知能犯の担当です)となり、
先輩からこう言われました。

 「全国の警察がインサイダー取引事件の初摘発を目指している。
もちろん警視庁も。
君と二人でそれをすっぱ抜く」

 何ヶ月か夜討ち、朝駆けを繰り返して、事件の輪郭が分かってきて、
東大出で頭脳派のその先輩が逮捕される某船会社の社長を特定して
Xデー向けの原稿を準備、
肉体派の私はその社長の写真撮影、関連会社の登記簿取りなどを任されました。

 そしてそろそろXデーというある日。
先輩から命じられて、問題の船会社の前で警視庁の家宅捜索を警戒していると、
ライバル各紙の記者が息を切らせてやってきて、「やったね」と言うのです。
何のことだか、わかりませんでした。

 実は、その前夜と当日の朝、先輩は「初摘発」の確証を得て、
夕刊一面に「インサイダー取引 警視庁強制捜査へ」
というような見出しの特ダネを出稿していたわけです。

 数か月、私としては特ダネを目指して二人三脚で努力してきたつもりでしたが、
最終局面の特ダネ出稿という一番興奮する瞬間を知らされなかったのです。
あまりのことに、怒るどころかあきれてしまったのを、今でもよーく覚えています。

 これは極端な例ですが、
特ダネを取材しているときには相当に「保秘」に気を使っていました。
社会部の同僚がどんな特ダネを狙っているかなどはさっぱりわかりませんし、
尋ねもしません。

 6畳ほどの狭い警視庁クラブ内でも、担当が違えば何をしているのかは???

 つまり、出稿してからデスクの目を通ってゲラになるまでは、
チェック担当の部署以外に特ダネに接触できる者はほとんどおらず、
いやゲラになってからも、
その現物が出回る編集局内の半径数十メートルにほぼ限られています。

 特ダネとはそういうものだと四半世紀も思い込んでいたわけですから、
せっかくの特ダネを水戸でも岐阜でも、
それどころか5000人もの職員がアクセス可能だったという、
NHKのあまりの大らかさに驚いたわけです。

 さて、辛口ビール「アサヒスーパードライ」の産みの親だという福地新会長の挨拶は
「NHKはがけっぷち。職員は強い気概を持って」というものでした。
頼みますよ。 
 (苦悶デスクこと木村透)
posted by ブログ管理者 at 14:40 | TrackBack(1) | ブログ版編集会議
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